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HOFSTEDEの多文化社会理論

  • 執筆者の写真: 熙明 李
    熙明 李
  • 2021年12月27日
  • 読了時間: 4分

Hofstedeの多文化社会理論(2014年7月9日追記)

Hofstedeは50カ国以上,11万6000人を超えるIBM社員を対象にした実証により,文化差異を求め, 「権力格差」,「個人主義―集団主義」,「男性らしさ―女性らしさ」,「不確実性の回避」といった 4つの文化的次元を見出した。

<権力格差 (Power Distance)> 権力格差とは,「それぞれの国の制度や組織において,権力の弱い成員が,権力が不平等に分布している状況を予期し, 受け入れている程度」と定義されている。権力格差は「権力の差」にどのように対応するかで,その強さが決定される。

上司と部下の関係に例えると次のようになる。 権力格差が強い場合,部下にとって上司は近づきがたく,面と向かって反対意見を述べることはほとんどありえない。 つまり上司と部下の感情的な隔たりが大きく,権力の弱い者は権力者の決定に依存することになる。

逆に権力格差が弱い場合,部下はかなり気軽に上司と接し,反対意見を述べることもできる。 つまり権力者と権力の弱い者との感覚的な隔たりが相対的に小さく,両者が相互依存の関係になっている。

権力格差は,ラテン系諸国,アフリカ,アジアなどでは強く,ラテン系以外のヨーロッパ諸国,北米などでは弱い。

<個人主義‐集団主義 (Indicidualism – Collectivism)> 個人主義‐集団主義は次のように定義されている。 「個人主義(Individualism)を特徴とする社会では,個人と個人の結びつきはゆるやかである。 人はそれぞれ,自分自身と肉親の面倒をみればよい。集団主義(Collectivism)を特徴とする社会では, 人は生まれた時から,メンバー同士の結びつきの強い内集団に統合される。内集団に忠誠を誓うかぎり, 人はその集団から生涯にわたって保護される」。

個人主義傾向の強い社会においては,何かを行う際に個人を強く意識する傾向があり, 集団というよりは個々人でのパフォーマンスを向上させることに重点をおく。

一方,集団主義傾向の強い社会においては,何かを行う際チームワークが意識され, 集団でのパフォーマンスを向上させることに重点を置く。

個人主義‐集団主義の傾向は,西欧や北米では個人主義の傾向が強く,アフリカ,南米,アジアでは集団主義が強い。

<男性らしさ‐女性らしさ (Masculinity – Femininity)> 男性らしさ‐女性らしさについては,「仕事の目標」というテーマにより分類されている。 仕事の中でも「給与」,「仕事に対する承認」,「昇進」,「やりがい」といったことを目標にする社会を「男性らしさ」と定義しており, 「上司との関係」,「仕事の協力」,「居住地」,「雇用の保障」に目標をおく社会を「女性らしさ」と定義している。

男性らしさの強い社会では,人々は,自己主張,競争といった目的を持っており,男女の社会的な役割が決められている傾向がある。 一方で女性らしさの強い社会では,人々は,配慮,社会環境志向を重視しており,男女の性的役割が明確でないことが特徴である。

男性らしさの傾向は,日本,オーストリア,イタリア,スイスなどで強く, 一方,女性らしさの傾向は,スウェーデン,ノルウェー,オランダ,デンマークなどで強い。

<不確実性の回避 (Uncertainty Avoidance)> 最後に不確実性の回避は,「ある文化の成員が不確実な状況や未知の状況に対して脅威を感じる程度」と定義されている。 不確実性の回避が強い社会においては,あいまいさや自分の持つ不安をすぐに解消したいという欲求が強い傾向にある。 また奇抜なアイデアや行動を抑制し,革新に対する抵抗があるのが特徴である。

一方で不確実性の回避が弱い社会においては,あいまいな状況であっても,危険についてよくわからなくても比較的平気であるといった傾向がある。 奇抜,革新的なアイデアに対して寛容であるといった特徴も持つ。

不確実性回避の傾向は,ラテンアメリカ,ラテン系ヨーロッパ,地中海諸国,日本,韓国では強く, 日本,韓国以外のアジア諸国,アフリカ諸国,アングロ系と北欧諸国は弱い。

※本文は古川(2010), pp.6-7より引用。

☆追記(2012年6月8日) Hofstedeの文化次元に追加された <長期志向‐短期志向 (Long- and Short-Term Orientation)> <気ままさ‐自制 (Indulgence – Restraint)>については,

  • Hofstede, Geert, Hofstede, Gert Jan, Minkov, Michael (2010), Cultures and Organizations -Software of the Mind-, 3rd edition, McGraw Hill.

  • 古川裕康 (2012),「各文化におけるGBI戦略 -Hofstedeの文化次元を用いた理論的考察-」,『経営学研究論集』,明治大学大学院,第36号,57-72頁。

を参照のこと。

☆追記(2014年7月9日) Hofstede et al. (2010)の邦訳版(2013年10月21日発刊)では, Indulgence – Restraintが「放縦‐抑制」と訳されています。

参考文献

  • Hofstede, Geert (1991), Cultures and Organizations : Software of the mind, McGraw-Hill Book Company. 岩井紀子,岩井八郎訳, 『多文化世界 ―違いを学び共存への道を探る―』,有斐閣, 1995年。

  • Hofstede, Geert, Hofstede, Gert Jan, Minkov, Michael (2010), Cultures and Organizations -Software of the Mind-, 3rd edition, McGraw Hill. ⇒【邦訳版】岩井八郎,岩井紀子訳, 『多文化世界 ―違いを学び未来への道を探る 原書第3版―』,有斐閣, 2013年。

  • 古川裕康 (2010),「GBI研究の萌芽-Rothの研究を中心に-」,『経営学研究論集』,明治大学大学院,第33号,35-49頁。[PDF]

  • 古川裕康 (2012),「各文化におけるGBI戦略 -Hofstedeの文化次元を用いた理論的考察-」,『経営学研究論集』,明治大学大学院,第36号,57-72頁。

大石研究室

古川裕康 作成

 
 
 

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