Acerca de

論文作成について感じたこと
論文作成について感じたこと
2001年入学 吉田雅弘
(1) 何を書くのか
私の場合、ゼミに入った当時は3PL事業についての研究を行えば
自分の知りたいことが分かるのではないかと考えておりました。
しかし実際に3PLについての論文を書き終わった後、
知りたいのは3PL事業のことだけではなかったことが分かりました。
これは、最初の3PL事業に関する諸文献を読み、論文を書き進めるうちに気づいたものです。
書いてみないとその先は見えず、書くことによって自分がどのくらい知っていているか、
本当は何が知りたいのかが明らかになっていきました。
この模索は修士論文を書き終えるまでずっと続いたのですが、
2年経った今、自分が本来学ぶべきものがなんとなく見えてきて、
やっとスタートラインに立てたかなというのが正直な気持ちです。
(2) どのように資料を集めるか
資料集めについては、検索手法を知っているか知っていないかで大きな差が出てくるのはご存知だと思います。
検索方法がよく分からなかった最初は、知りたい分野の書籍から執筆した人間
の在籍していた大学などを調べ、書庫の紀要論文のコーナーに入り浸って、
該当する大学の論文を片っ端からページをめくって探しました。
この作業、非常に効率が悪いのは明らかです。
おかげで書庫内の大学別紀要論文の位置には詳しくなりました。
また、たまに掘り出し物の意外な論文にヒットすることもありましたが、効率の悪さはピカイチです。
私たちの学年では小林さんが「検索王」だったので、いろいろ探し方も教えていただきました。
同期内の情報交換がけっこう重要です。
(3) 論文の構成
構成を考えるにあたっては、まずは様々な論文を読まれることが大事かと思います。
様々な論文に触れるうちに論文の大まかな型が分かってくると思います。
入学当時の私は論文の書き方、構成などについての知識を何も持ち合わせていなかったので、
大石先生や紀要論文の「マネ」を徹底しました。
書きたい内容によって構成は変わってくると思いますが浦上さんが一時言っていた「論文構成の黄金比」
もある程度あたっているかと思います。
構成については何よりも多くの論文に触れるのが一番の近道かと思います。
そのうちに「こんな分析の仕方あるのか、自分はこの型が一番あってるな」とか
「歴史的変遷は必ず入ってるな」とかいろいろ気づくと思います。
(4) どのタイミングで書き始めるか
どこまで資料を集め、どのタイミングで書き始めるかということは、
人によってかなり個人差があるように思います。
当初私は、まず論文の構成をとりあえず作って、それにそって資料集めを行っていきましたが、
これが実際に論文を書き始めると、構成はもちろん書きたいことまで変わってきて、
必要になってくる文献もまったく違う分野のものであることに気づきました。
「書いては調べ、書いては文献を集め」という方式で進めていたのは、
要は自分が何を書きたいのか分からなかっただけなんですね。
その後、自分の知りたいことが見えてきて、論文を何回か書いているうちに分かってきたのは、
たくさんの資料を集めて、それを片っ端から読んで整理し、
頭の中で混沌とした状態にどれだけ長い間耐えることができるかどうかが勝負の分かれ目であるということでした。
私の場合、ちょっとポイントをついた文献に出会うと、書きたくて書きたくてしょうがない状況になります。
しかし、いざ書いてみるとそれら文献だけではとても論文には程遠く、
さらに多くの文献をあたる必要性に必ず気づきます。
そのため、「貯めて、貯めて、まだ貯めて、一気に書き出す」方式に後半は変更しました。
「あ~早く書いて頭の中をすっきりさせたい!」「早くこの詰め込んだ内容を吐き出したい!」とは思うのですが、
頭の中で煮詰まるまで我慢してから書き始める方が時間の無駄がないように思います。
「早く頭から出したいけど、もうちょっと貯めればもっと良いものが書ける」ということが分かってくると、
「いつ書くか、いつ書くか」という、そのギリギリの心理状態が逆に快感になってくるようです。
同期の人間も同じようなことを言ってました。
(5) 「寝かせ」の話
大石先生から都度指摘のある文章の「寝かせ」は非常に重要だと思います。
私は性格的に一夜漬けやアドリブ、無理な頑張りが効きにくい人間なので、
論文執筆はかなり前段階から「ちびちび」やってました。
時間的な余裕がないと細かいところに気が回りにくくなるので、
なるべく計画的に準備し、十分に「寝かせ」ることが必要と思います。
私の場合、寝かせてる間に、同期はもちろん妻や全く畑違いの友人にも誤字チェックをお願いしてました。
(6) 相互チェックの重要性
論文は読んでもらった人数分だけ確実に良くなるということが、恥ずかしながら2年目になってやっと分かりました。
同期間で相互チェックしていた時、最初の頃は誤字脱字程度の指摘が多かったのですが、
2年目に入ってからは同期もツボ得てきて、厳しく的確な指摘を頂くことが多くなりました。
そういう意味では同期間でなるべくたくさん論文を書くように盛り上げ、
相互に論文レベルを上げるのが理想かなと思います。
また、相互チェックすることで、人様の書いた論文を理解し修正する苦労(つまり大石先生の苦労)
を身をもって感じることができると思います。
それから、相互チェックの際にお薦めしたいのは、まず自分の論文を読んでもらう前に、
他の人の論文を先に読んで、無残なまでに細かく指摘し、赤ペン修正することです。
そうすれば読んでもらった本人も、相手の論文を読まざるを得ず、自分への厳しい指摘に対抗して、
より本気で自分の論文について指摘してくれるからです。
他の人の論文を指摘した回数だけ、自分の論文も良くなってくるのではないでしょうか。
(7) 論文執筆ルールの徹底
ルールに従ってない論文は、執筆者が主張したい内容に読み手が行きつく前に、
細かいところで思考が止まってしまいます。
論文執筆のルールに一字一句則り論文を書くことは、
もしかしたら書く内容以上に重要な(大学院で学ぶ)要素かもしれません。
特に出典明記や引用ルールは一見簡単なルールなのですが、
資料の信憑性を問うのに実務の世界でもかなり役立つように思います。
(8) 理論研究の必要性
1年目でしっかりした理論研究をされることをお薦めします。
私の場合は、書きたいことが理論とあまり関係ないところから始まってしまったため、
後で後悔する羽目になりました。
一年目で何を研究するか対象が曖昧なのは当然だと思いますが、
少なくとも2回目の秋の論文で、自分の分野と関係ある理論研究に挑戦するのが理想なのかなと思います。
(9) 論文を書くことの意味
会社や取引先で様々な内容を説明する機会がありますが、
今感じているのは、自分で調べて論文にした内容ほど自信をもって説明できるものはないということです。
普段意識せずに読み流したものは、なかなか自信を持って説明できません。
ということは、考えて苦労して書いた論文の数が多いほど、本当の実力が身につくということなのではないでしょうか。
また論文を書くときに、常に「誰に読んでもらいたいのか」を意識して書くことが重要だと思います。
そうすれば読み手が不安にならずに済みますし、読み手を意識した論文修正のアドバイスを、
周囲から受けることも可能になるのではないでしょうか。
(10) ツールとしての論文
正直私は、この世の中にこれほど論文があるとは思いませんでした。
しかし読み始めてみると、これほど安いコストで客観的に真実に迫る文献は
なかなか手に入りにくいのではないかと思えるようになりました。
自分とはあまり関係ない分野のものについても、なにかと役に立つものが多く、
この機会に是非いろんな分野の論文を読むことをお薦めします。
偉そうなことは言えませんが、仕事で何かを調べようと思ったとき、論文を探す癖がつきました。
この論文というツールを知っている人は、実はあまりいないのではないかと思います。
自分の論文の質を向上させるためにも、様々な分野の知識を蓄えるためにも、
社会人は論文をどんどん活用すべきと思います。
以上。